【C向けサービス最重要指標】リテンションの測り方・改善のポイント

起業家・プロダクト開発中の方々に向けて、事業のアイデアや起業のノウハウを配信していきます。
佐藤 直紀 2022.07.13
誰でも

W venturesの佐藤です。
スタートアップやメガベンチャーでPM・事業企画経験を経て、現在シードアーリーステージの主にBtoC/BtoBtoCサービスを中心に投資活動をしています。

今回のニュースレターは最近起業家と何度か話に上がった、リテンションの改善方法について整理したいと思います。リテンションレートは事業をスケールさせるために必要不可欠な指標ですのでプロダクト開発中/運営中の皆さんのヒントになれば幸いです!
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 ▼ 目次

  • リテンションの重要性

  • リテンションの計測方法

  • リテンションレート見直しのポイント

  • まとめ
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1. リテンションの重要性

まず、あらためてリテンションがどのように重要なのかおさらいです。

重要性① PMFを見つける指標となる

プロダクトリリース間も無い、シード期のスタートアップにおいては、”ユーザーに愛されるサービスを作ること”が最重要目標となりますが、ユーザーに愛されているかどうかを判断する指標として、"実際に使い続けられているかどうか"リテンションレート(●日後に何%のユーザーが残っているか)を見ると判断することができます
下の図では、青線はユーザーが使い続けておらずmust haveな状態で無いこと、緑線はユーザーが使い続けておりmust haveとなっていることがわかるかと思います。

Y Combinator Startup School "How to Get Users and Grow"

Y Combinator Startup School "How to Get Users and Grow"

重要性② 顧客獲得の加速

既存ユーザーのリテンションレートが高いサービスは、新規ユーザーの獲得にも有利となります。
バイラル性の高いサービスやUGCでコンテンツが増えていくサービスであれば、"ユーザー数 x バイラル係数"で新規ユーザー獲得が増加していくので、既存ユーザーが長く残存しユーザー数が積み上がっていくことが新規獲得数の増加に直結します。
また、主にPaid施策で顧客獲得を目指すサービスであっても、既存ユーザーが長く残存することで収益性(LTV)が増大するため様々な獲得チャネルを利用することができるようになります。

重要性③ 事業規模を押し上げる

顧客獲得とも関連しますが、事業規模が成長するためには、当たり前ですが"離脱ユーザー数(売上) < 新規獲得数(売上)"である必要があります。リテンションレートが低く離脱ユーザー数が多いと、新規ユーザー獲得の打ち手が少ないこともあり早期に離脱と獲得のボリュームが一致し成長の頭打ちとなってしまいます。

このようにプロダクトの価値検証においても、スケーラビリティにおいてもリテンションは重要になってきます。

2. リテンションの計測方法

ユーザーの継続に関する指標として、チャーンレート(当月の離脱者数 ÷ 全ユーザー数)が分かりやすいこともあり良く浸透している指標かと思いますが、リテンションを改善するにあたっては前述のように、ある時期に流入したユーザーが●日後/週間後/月後に何%残存しているのかコホートでリテンションレートを追うことをオススメします。

チャーンレートは、特にユーザー数が少ない初期においては、直前の新規獲得施策次第で大きくズレてしまうことがありますし、コホートで追うことでユーザーが使い続けているmust haveな状態になっているのか(前述の緑線)・リテンションが改善傾向にあるのかどうかをわかりやすく見ることができます。

また、私がデータ分析が得意なメガベンチャーで子会社経営に携わっていた際に感じたことですが、ユーザー分析だけでなく事業計画の関数においても、ざっくり既存顧客にチャーンレートを掛け合わせるよりも、月次のコホートを積み上げ既存ユーザー数を出した方が精度高く、月次の施策と紐付いているため予実差の理解もしやすいと思います。(そういった作りの事業計画エクセルをあまり見ない気がするのでイメージしづらければお気軽に聞いてください)

コホートでリテンションレートを見えるようにできましたら、自身のサービスが良いのか悪いのか他プロダクトや同業界のサービスと比較してみてください。
こちらのOff Topicテツローさんのnoteではジャンル別目安が大変参考になります。

それではここからリテンションレートの改善方法について述べていきたいと思いますが、前提として上記noteからもわかるように、リテンションレートのベンチマークはサービス特性によって異なります。
際限なく改善できるものではなく、自社のサービス特性を踏まえたリテンションレートを前提にグロースエンジンを設計することも重要となります。
現在a16zのgeneral partnerを務めるAndrew Chen氏もリテンションレートを大幅に改善することは難しいとツイートしていたことがあります。

3. リテンションレート見直しのポイント


ポイント① ペインを抱えている正しい顧客に訴求する

リテンションレートが低いサービスは、そもそも"誰のどんな課題を解決するサービスなのか"、顧客選定がズレている可能性があります。すぐに離脱してしまう層ではなく熱狂する顧客セグメントでサービスを磨き、順にサービスを広げていく必要があります。

市場を分解、熱狂する顧客セグメントを特定し、何がそれぞれにセグメントに刺さっているのか見極め、顧客セグメント/TAMを広げる毎に機能・価格・チャネルをチューニングしていく様子はSuperhumanの顧客セグメント分析方法が参考になります。

ポイント② 価値をしっかり体験させる

正しい顧客セグメントに提供できたら、ユーザーに課題を解決できることを速やかに示すことが何よりも重要です。
実はリテンションレートが上位のAppも、平均的なリテンションのAppもユーザーが離脱していくカーブは似ています。大きく異なるのがD1~D7のリテンションレートです。


ユーザーにサービスを思い出してもらうプッシュ通知やメールマーケティングよりも遥かに初回体験がリテンションに大きな影響を与えています。
ユーザーに何が刺さっているのか・代替手段より10倍優れているポイントは何か・それをユーザーが実感するAHAモーメント(熱狂するきっかけとなるサービスのコア体験)を明確にし、初回体験/オンボーディングを改善することが重要です。

例えば、SNSやマーケットプレイス等であれば、
 ・起動時に新しい投稿(出品)がある
 ・自分も簡単に投稿(出品)でき
 ・自分の投稿(出品)に反応がある
といった体験がコア体験となることが多いと思いますので、
プロダクトとしては、
 ・初期から繋がっている人を●人以上にする/供給量を●件以上あるようにする
 ・初投稿(出品)が迷わない仕組み
 ・投稿に●時間以内に反応がある
というようにオンボーディングを設計・調整する必要があります。

W ventures投資先のRuntrip社がこの辺りのリアルな試行錯誤の記録を公開しているので是非参考にしてみてください!

ポイント③トリガーを埋め込む     

初回体験/オンボーディングによるアクティベーションがある程度刺さっていることが確信できれば、その後の習慣化を促すきっかけ(トリガー)を顧客体験に埋め込んでいきましょう。
逆に初回体験/オンボーディングで価値を伝えられていない状況で、機能を追加しても効果が薄いか持続しないことが多いです。

トリガーは、ユーザーに情報を届け行動を促す外的トリガーと、ユーザーに行動を連想させる内的トリガー分けられます

外的トリガーとしては、プッシュ通知や広告で見かけてサービスを想起するというものがありますが、これはユーザーにリマインドする効果はあっても、サービスを使いたいと思っていない人の気持ちを変える効果は弱いかと思います。
そのため、内的トリガーとして習慣的にサービスを想起する体験を作ることがより効果的です。

内的トリガーとしてサービスを上手くユーザーの生活に埋め込んだ例として、ライフスタイルメディア「キナリノ」があります。通常は服やアイテムを買いたい時に想起されるサービスですが、毎日の天気に合わせた「服装のめやす」機能を設けることで、"今日何着よう"という毎日の習慣にサービスを想起するきっかけを作ることに成功しています。

ポイント④ スイッチングコストを高める

離脱が起きるきっかけとして、サービス - ユーザーの2者間の問題ではなく競合や代替手段に移ることが理由の場合もあります。

ユーザーの乗り換えを防ぐためには、第一に顧客目線で絶えず機能的価値・情緒的価値の源泉となるプロダクトやテクノロジーを日々改善し競合/代替手段より優れている状態を作り出すことが重要です。

単純な機能・価格・使い勝手の比較で優れていること以外にも、蓄積されたデータ・コミュニティ・システム連携(家計簿アプリ・SNS・ストレージサービス等)や、各種ロイヤリティプログラム、最近ではトークンの活用(X to Earn等)によってスイッチングコストを上昇し高いMoatを築いている例があります。
Moatについてはこちらのnoteに非常にわかりやすくまとまっているので参考にしてみてください。

ポイント⑤ 離脱前に察知し拾い上げる

ポイント1~4と比べると大きな改善インパクトを出しづらい傾向があるかと思いますが、ユーザーの熱量を示す指標をウォッチすることで、ユーザーが完全にプロダクトから離れ切る前に拾い上げる施策も行われています。
例えばソーシャルゲームでは、直近のログイン回数や課金額、休眠期間(ログインがない期間)といったデータをヘルススコアとし、離脱候補ユーザーに再度ゲームの面白さや価値提供を伝え直す施策が行われています。

4. まとめ

今回はリテンションレートを改善するにあたりインパクトの大きいポイントについて紹介しました。
ポイント① ペインを抱えている正しい顧客に訴求する
ポイント② 価値をしっかり体験させる
ポイント③トリガーを埋め込む 
ポイント④ スイッチングコストを高める
ポイント⑤ 離脱前に察知し拾い上げる


文章化するにあたり、改めて重要だと思ったのはやはり顧客を十分に理解することです。離脱理由が、サービスの価値がわからなかっただけなのか、環境変化で使う必要がなくなってしまったのかでは対応が大きく異なります。

最後に顧客理解については参考になる、ユーザーインタビューやN1分析の考え方について紹介して今回のnoteを終えようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!

***

今後も主にBtoC/BtoBtoC事業の立ち上げや運営に役立つ情報を発信していきたいと思います。起業家・PM・エンジニアの方々がベストプラクティスをシェア出来るような取り組みもできたらと思っているので、私自身ユーザー(起業家等)インタビューや施策のディスカッションをお願いさせて頂くことがあるかと思います。(既にご協力頂いている皆さんありがとう!)z

起業家/起業準備中の方々の事業や資金調達についてのご相談はお気軽にtwitterからDMください!
それでは次回のニュースレターでまたお会いしましょう!

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